2007年8月の樹木の伐採

 

 それは突然はじまりました。

 

 2007(平成19)年8月、一般の島民がなにも知らされない中、突然、大型ショベルカーが轟音をたて、地面の土ごと、根こそぎ、樹木を伐採してしまいました。その範囲は、アイヤル浜付近の森林が広がっていた部分、竹富島の約10分の1にも及びます。このとき、伐採された樹木は、火がつけられて燃やされてしましました。それまで島民が大切にしてきた樹木が、轟音とともに事も無げに伐採されていく様子に、多くの島民が心を痛めました。

 竹富島住民に対する最初の説明会が開催されたのは、それから遅れること約5ヶ月後の2008(平成20年)1月21日のことです。

 

 伐採の結果、2007(平成19)年10月12日までに、それまでの豊かな竹富の森は、以下の写真のように無残な姿に形を変えてしまいました。車両の通行部分についてアジラが破壊されてしまっていることが確認できます。

 

<2007年10月12日現場写真1>

 

<2007年10月12日現場写真2>

 

【検証】

 

 この地域は、全域が、自然公園法に基づく国立公園、及び、文化財保護法・竹富町歴史的景観形成地区保存条例に基づく「歴史的景観保全地区」に指定されています。このような土地でどうしてこのような自然にも、史跡にも配慮が感じられない伐採が可能であったのか。

 

 当会では、これらの法律に基づく手続きがしっかりとなされていたのかを検証しました。

 

 すでに、対象土地の所有権は、2007(平成19)年5月15日、株式会社竹富土地保有機構に移転されており、2007(平成19)年6月13日、その土地に設定されていた抵当権は抹消されました。このことは、この日に(おそらく星野リゾートまたは星野氏から)資金投入された事実を示しています。

 そして、その翌日である、2007(平成19)年6月14日、なぜか土地を所有している株式会社竹富土地保有機構(代表:星野佳路氏)ではなく、旧所有者である南西観光株式会社(代表:上勢頭保氏)から、竹富町教育委員会に対して、以下の「現状変更行為許可申請書」が提出されています。

 

<平成19年6月14日付け現状変更行為許可申請書>

 

 この申請書には、写真のとおり、「対象地の測量及び生息樹木の調査、在来種樹木の保護」等のために、「小型ユンボにより雑木(ギンネム等)等を伐採」すると記載してあります。

 2007(平成19)年6月24日、この申請書について、竹富島集落景観保存調整委員会にて審議がなされた結果、「広範囲にわたる申請地であり、申請地には史跡や古墳なども現存する。教育委員会と相談の上、調査をおこなって欲しい」という意見が付され竹富町教育委員会に回付されました。これを受けた竹富町教育委員会は、2007(平成19)年7月17日、以下のような様々な条件を付してで伐採を許可しました。
① 「景観を損なわないよう最小限に伐開すること。土地の形質変更は認められない。大木等は切り倒さないこと。測量調査の実施に当たって伐開する間隔は、L=25m以上とする。」
② 「伐開中に拝所・お嶽・墓等が発見された場合は、速やかに竹富町教育委員会文化財係に連絡をするようお願いします。」
③ 「伐開に当たっては、着手・中間に教育委員会・調整委員会の確認を受けてください」
④ 「現状変更行為の完了後(様式第4号)を提出して下さい。添付書類は、現況写真及び完成後の写真を提出して下さい。」

 

<2007年7月17日付け現状変更行為許可書>

 

 

 皆さんは、この許可書に記載された許可条件と、冒頭の樹木の伐採の形を見比べてみて、どのように判断されるでしょうか。
 当会としては、以下のとおりであると考えています。
 竹富町教育委員会の許可条件のうち、「伐開する間隔は、L=25m以上とする。」とは、測量のために最小限必要樹木の伐採としてはラインによる伐採を想定した上、その樹木を伐採するライン間の間隔をを25m以上とることを意味しています。従いまして、冒頭に記載した全面的な伐採は、この許可条件に違反しています。

 また、平成20年2月7日になってようやく、開発者から竹富町教育委員会に、上記の許可書の条件にある「現状変更行為完了届」が以下のとおり提出されています。しかし、この完了届の下欄に記載されているように、添付書類として「完了写真」しか添付されておらず、「現況写真」は添付されていません。この点においても、開発者の行為は竹富町教育委員会の許可条件に違反しています。

 

<平成20年2月7日付け現状変更行為完了届>

 

 以上みてきたように、今回のリゾート開発計画は、スタートである樹木の伐採からして、住民に何ら知らせることなく、環境・景観への配慮をせずに、かつ、竹富町教育委員会の許可条件に違反したかたちで行われたものと考えられるのです。

 

 なお、この樹木の伐採について、星野リゾートのホームページには、以下の記載があります。

 

 星野リゾートは植栽の専門家を島に派遣し、敷地の植栽の状況や歴史的な背景の調査に基づいて計画を進めています。計画敷地は、昔は開けた農地であったのですが、その後放置され、ギンネムに占有された藪になっていました。過去に繁殖力の強いギンネムは煮炊きのために人工的に持ち込まれましたが、農業の衰退とともに島を覆い、今は白蟻の巣にもなっていることから島の方針とともに将来はなくしていきたいと考えています。2007年8月に計画敷地において薮の伐採を行いましたが、基本方針はギンネムを伐採する一方で、ガジュマル、テリハボクなど極相を形成する緑陰樹を残すと共に、オオバギなどの先駆植物であっても景観を形成する大きな樹木はそのまま残しています。また、以前は畑だったということを示すシークワーサーの木等稀少な樹木も残しました。

 

 しかし、この森には、ギンネム以外にもたくさんの樹木がありました。あたかも「ギンネム」のみを伐採したかのようなこのような説明について、皆さんはどう思われるでしょうか。

 

 また、星野リゾートのホームページには、以下のような記載もあります。

2007年秋に竹富土地保有機構を緊急に設立、ここに星野リゾートから必要な資金を投入し、すでに抵当権を抹消する手続きを完了しています。

 

 しかし、株式会社竹富土地保有機構が設立されたのは、2007(平成19)年4月13日、対象土地の所有権を同社が取得したのは、同年5月15日、資金投入の事実を示す対象土地の根抵当権の抹消は、同年6月13日です。そして、その翌日の同年6月14日に、上記の伐採許可申請がなされているのです。
 星野リゾートが株式会社竹富土地保有機構の設立時期を知らないなどということは、考えられないことですので、この「2007年秋」という時期の記載は、意図的なものである疑いが極めて高いといわざるをえません。そうだとすれば、その狙いはなんなのか。この伐採への関与を否定したいということであるのか。重大な疑問を提起せざるをえません。
 皆さんはどう思われますか?

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4 Comments »

 
  • kusa より:

    この写真は非常にショックですね。
    もうすでにこういうことになっているとは、知りませんでした。
    昨日「最悪な開発計画ではないようにも思える」と、別の掲示板に書いてしまったのですが、
    やり方は、あまりにも卑怯・劣悪・狡猾だったようですね。
    ただ、ただ、胸が痛むばかりです。
    まだ、しかし、引き返せると思います。
    たくさんの植物や生き物のいのちを奪い、住処をおいやった、その上に建てられる
    施設が、”竹富の良さ”を人に伝えることはないでしょうね。
    どう考えても”特に竹富島でなくてもいいもの”になると思います。
    そんな特別な個性のない施設に、たくさんの人、そしてたくさんのリピーターが来るとは思えません。
    また、この施設に宿泊した人は、おそらく帰宅後、周囲に、
    この施設の印象を=竹富島の印象 として語ることになりますが・・・
    「良かった」という人も居れば、「悪かった」という人も居りましょうが・・・
    仮に「良かった」という人が 多かったとしても、島の人は それでよいのでしょうか?
    私が島人だったら、仮に「良かった」という人が多くても
    激しく自尊心が傷つけられた気がすると思います。

    どうか、これ以上傷口を広げないでほしいものです。

  • めーがーぬかーずー より:

    この場所は実際に見ています。
    見た瞬間 まさに胸が潰されたようでした。
    あまりにも酷すぎます。あれが「最小限に伐開」したと言うなら、
    どれだけ巨大なリゾートができるんでしょう。
    開発者側には「島を守る心」が微塵も無いように思われました。

    • mahae より:

      写真も撮りようによっては大げさになるのですが、現地を見たかたの感想をいただいて、「酷い」状況であることを確かめました。
      ありがとうございます。

  • mahae より:

    写真に切り株が無いから、ユンボで根まで掘ったようですね。
    開発者は「藪」と書いていますが、それなりの樹木があったはずです。
    測量と調査のためなら、切り株を残しても良かったはずで、株が残っていれば森は再生したはずです。
    届け出た目的のうち、「在来種樹木の保護」とは全く正反対の行為です。
    そもそも、電子測量の時代に伐採は不要ですし、更地にする口実だったとしか思えません。
    まさに、森を「踏みにじられた」感じです。

 

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