東京竹富郷友会昭和63年5月22日特別決議

4月10日東京集会において発表しましたとおり、東京竹富郷友会は、昭和63年5月22日、株式会社南西観光によるリゾート開発計画に対し、反対の特別決議を行っております。そこで、示された内容は、当会の考え方と軌を一にするものであります。全文をご提供いただきましたので、謹んで、ここに掲載させていただきます。
 
特別決議 『竹富島憲章』に立脚した島興しのために
 東京竹富郷友会は、この度南西観光株式会社のリゾート開発計画が明らかになり、しかも既に開発許可申請が沖縄県知事や竹富町長に提出され、竹富公民館の意向によって決定する段階まできているという事態を重視してきた。その事を議題として去る2月23日に開催された竹富公民館議会並びに調整委員会では結論に至らず、島民や郷友会等とも連絡をとりつつコンセンサスを得る必要があると決定したとの地元紙の報道に接し、竹富公民館長(当時)より資料を取り寄せ検討してきた。高那三郎竹富公民館長は、5月5日付で東京竹富郷友会の意見を聴取したいという文章を発出してきた。その要請を受けて私たちは今日、これまでに検討してきた結論をまとめ次の通り本会の総意として決議する。
(1) 南西観光(株)のこの度の「リゾート開発計画」に現状変更行為の同意を与える事に反対する。その理由は、この計画が『竹富島憲章』精神に反するからである。『竹富島憲章』の精神を貫くものは≪保全をすべてに優先される事を基本理念≫としている。そして、≪売らない≫≪汚さない≫≪乱さない≫≪壊さない≫≪生かす≫の原則を守ると宣言している。本リゾート計画は、どこをどう押してもその原則に違反し到底認めることは出来ない。次に本計画は、竹富島の活性化にはつながらない。本計画の計上するように収益を上げたところで潤うのは企業であって、竹富島が潤うわけではない。逆に竹富島の全体の景観を損なうことになるから、むしろ観光の魅力を失わせることになり逆効果となる。何故なら、竹富島の南の端、武佐志原から棚原、シュッサ、漢那地、それに東美崎を経て、細原、花城原、島の玄関ホーシの近くショールに到る東半分の約3分の1におよぶ。島の景観が一変することは明らかだ。町道アイヤル線から南半分はゴルフ場で、その北半分に観光農園、クアハウス、アーチェリー、野外劇場、野球場、ゲートボール場、リゾートホテル(200室)となっている。そのどこをみても竹富島らしいところはない。どこにもあるような大量に送り込まれた観光客をこなす施設である。東岬の風光の香る星砂の浜を切り刻んでマリーナをつくるという計画は最も象徴的でさえある。島の景観を殺して島を生かすなどごまかしでしかない。次に私たちが注目しているのはその資金計画である。約90億円、自己資金10億円、残り80億円が借入金である。南西観光(株)のいう自己資金とは一体何処からくるのか。南西観光(株)にはこのような資産はない。もっとも資本には持主の名前が書いてあるわけではないから、つまり資本に国境(島境)はないから、どこからどのように流れてくるのかがはっきりしない。しかも資本は、利潤を目的として投下されるのであって、竹富島の活性化のために役立てようというものではない。だから、資本の回収に全力を尽くす。最初は良いことずくめであるが、目的さえ達すれば後はどうなろうと資本の理論が優先する。小浜島のハイムルブシは良い例ではないか。
(2) 『竹富島憲章』には、≪われわれ竹富人は、無節操な開発、破壊が人の心までも蹂躙することを憂い、これを防止してきたが、美しい島、誇るべきふるさとを活力あるものとして後世へ引き継いでいくためにも、あらためて「かしくさやうつぐみどぅまさる」の心で島を生かす方策を講じなければならない。≫と宣言している。しからば、島を生かすとは何か。それは言うまでもなく、竹富島の自然景観と伝統文化を現代のくらしに生かすということである。竹富島は自然と文化の宝庫である。だが過疎と高齢化のために、文化を受け継ぐ若い力が乏しい。活力ある竹富島をどう築くかが大きな、しかも緊急の課題となっている。しからば、企業を誘致して産業を起こせばいいのであろうか。私たちはそうは考えない。ではどうするか。それは大変難しい問題であるが、竹富人の知恵を寄せ集めれば打開できると思っている。
(3) 「うつぐみ」の精神を今日的に発展させることである。まず『竹富島憲章』の精神を竹富人に徹底させること。石垣、沖縄本島、本土在の郷友にも徹底をはかること。コンドォイ近辺は土地投機の「地上げ屋」が横行しているというから、竹富島の土地は商売にならないということを毅然として示す必要がある。次に、竹富公民館と集落景観保存調整委員会の機能を強化して島興しの青写真をつくる。集落景観保存地区内の空き家や空き屋敷をもっと活用する。歴史的景観保全地区の開発については竹富島の景観が損なわれない範囲にとどめ、しかも竹富島全体が潤うような方法はないのか、利潤追求を第一としない社会福祉施設などのしっかりとした所に経営させるようにした方がよい。調整委員会には3郷友会の代表や竹富島を愛する学識者も構成メンバーとしてもらいたい。財政的にも力を持つ必要がある。歴史的景観地区保存基金なども自治体に働きかけて条例化させていく運動が大事である。竹富島は竹富町の町並み条例に指定された地区であるから、行政にも積極的に働きかけ、勝手な開発を認めさせないようにしなければならない。以上のことを提案する。
わが竹富島、親島を今日のように、自分のものとしていとおしく、身近に思い、共に生きたいと願ったことがあったであろうか。
 私たちは、現に島に住むすべての竹富人、異郷でくらすすべての郷友、竹富島を愛するすべての人たちに呼びかける。『竹富島憲章』の精神に立脚した竹富島の島興しに立ち上がろうと。
 サンゴ礁の盆の島はいつまでもシキタ盆の気高さを失わない島として大事にしたいと念じて、私たちは東京竹富郷友会第63回総会の名において特別決議を採択する。
昭和63年5月22日
東京竹富郷友会第63回総会

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